きつい仕事でうつ病になったパティシエの話|特にクリスマス

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きつい仕事でうつ病になったパティシエの話|特にクリスマス

「ママ!このケーキにしよう!」

ケーキを見て興奮している女の子を、雄太さん(24歳:仮名)は優しい眼差しでながめていました。ケーキの甘くておいしそうな香りが店内を満たしています。「おいしそうね」という声も聞こえてきます。

雄太さんはこのケーキ屋でパティシエとして働いています。雄太さんは幼い頃からおいしいケーキを作る「パティシエ」という職業にあこがれて専門学校を卒業後、現在のお店に就職しました。個人経営の小さなお店ですが、雑誌に載るほどの有名店です。

しかし、あこがれていたパティシエという職業は想像以上に過酷でした。勤務時間は朝の6時から22時と長時間労働で、さらにお店は「みなし残業代制」を採用しており、残業代は40時間までしか出ません。しかも、休みは週1日しかないので、疲労がなかなか抜けきれません。

それに加えて、お店のオーナーは「パティシエは将来は独立すべき」という考えの方だったので、お店は従業員に「社会保険」をかけてくれず、給料の中から自分で「国民健康保険」と「国民年金」を支払う必要がありました。

これらの勤務条件も大変ですが、雄太さんが何よりも辛かったのは超体育会系のオーナーです。オーナーは「職人気質」が非常に強くて、時には手が出るタイプの方でした。オーナーだけでなく先輩達もバリバリの体育会系で上下関係が厳しく雄太さんは毎日怒鳴られました。

「気合入れろ!」
「根性がたりねーぞ!」
「ノロノロしてんじゃねーぞ!」

おとなしくて物静かな雄太さんはこの職場になかなか慣れることができませんでした。日常的に怒鳴られているうちに雄太さんは少しずつ心を病んでいきました。

ある12月の寒い日のことです。雄太さんが、かじかんだ手でケーキの材料を運んでいた時に、手を滑らせて材料を落としてしまい、全て廃棄することになってしまいました。

すると、激怒したオーナーは雄太さんの顔面をこぶしで思いっきりなぐりました。雄太さんは後ろに吹っ飛んで尻もちをつき、数秒後、雄太さんの顔に痛みがじわっと広がりました。そして、オーナーは雄太さんに怒鳴りました。

「このボケ!土下座しろ!」

雄太さんは土下座しながら「申し訳ありませんでした」とオーナーに謝りました。あまりのみじめさに雄太さんの目からは涙がこぼれました。その翌日のことでした。

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