略奪愛|不倫を繰り返す最低のクソ野郎と結婚した女の末路
恵美さん(仮名:30歳)
「略奪した自分が今度は略奪されるとはね」
あれは私が26歳の時、大学時代の女の友達と2人でバーのカウンターでお酒を飲んでいた時のことでした。そこは地元の人気店で、シャンデリアがあって、店内はオレンジ色の光に包まれ、おしゃれなジャズが流れる大人の雰囲気があるバー。ただでさえ、気分が高揚していた。
突然、カウンターの隣に座った男性に声をかけられました。彼は身長が180cm、切れ長の目でキリッとした顔、声は低くて、笑顔が素敵な誰が見ても美形の男性でした。年齢は30歳。
(わー、なんて良い男)
私は一目でその男性に恋をしてしまいました。そして、その日は連絡先だけを交換し、毎週末に会うようになった。そして、3回目のデートの後に正式に交際を開始しました。ただ、その頃から彼の行動に不審な点を感じたのよね。
デート中に電話がかかって来るとその場で出なかったり、「ちょっとごめん」と言って、遠くに走って行って電話に出たり。彼のスマホにLINEの着信があった時、私が「確認して良いよ」と言っても、ちょっと動揺したようなそぶりを見せたり。私は次第にこう感じるようになっていった。
他に女がいるの?
ある週末に彼とカフェでお茶をしていた時のことよ。彼がトイレで席を立った時、私はテーブルに残されたスマホに気づいた。私は、彼がスマホのロックを解除する時の指の動きを思い出して、真似して番号を押すとあっさりとロックが解除できた。すると、そこには予想を超える内容が映し出されていた。
(け、結婚してたの!?)
しかも、奥さんだけじゃない。かわいい3歳くらいの女の子の画像もあった。他に女がいるのかな?くらいは想像していたけど、まさか結婚していると思わなかった。私は彼にそのことを問い詰めた。
「あなた・・・結婚してたのね!しかも、子供もいるんじゃない!」
彼の顔は真っ青になった。しかし、ポツリとこうつぶやいた。
「隠していてごめん。僕は結婚している。子供もいる。でも、妻とはもう冷え切っているんだ」
奥さんや子供がいるという事実を打ち明けられても、私は大好きな彼をあきらめることができない。
(このまま引き下がることはできない)
私は優しい口調に努めて、彼にこう聞いた。
「私と奥さんのどっちを取るつもり?」
彼は無言のまま下を向いている。カフェの店員の声だけが響く。気づいたら私は下唇をかみしめていた。1分ほど経っても彼は無言のまま。その時、私の脳裏にこの言葉が浮かんだ。
(このまま終わってしまうの?)
それだけは嫌。私はポツリとつぶやいた。
「あなたと別れたくない」
下を向いていた彼がようやく顔を上げた。私はそのまま続けた。
「2人で頑張っていこう。私も頑張るから。2人で働けば養育費くらい余裕でしょ?」
彼の目から涙がこぼれ、妻とは別れると約束してくれた。私は自分に言い聞かせた。
(大丈夫。お金は何とかなる)
その日、彼はすぐに奥さんに離婚して欲しいと切り出した。彼が言った通り、奥さんは彼に対しては冷めきっていたみたいで、すぐに離婚に承諾してくれた。
条件は、慰謝料はなし、養育費を毎月5万円支払うこと。
離婚届が受理された日、彼の「元奥さん」から、どうしても私に一言だけ言わせて欲しいとお願いがあった。「別にきついことは言わない」という約束だったので、私も承諾し、元奥さんと私は電話をすることになった。そこで元奥さんは私にこう言った。
「あなた、苦労するわよ。私も『略奪愛』だった。この男は繰り返すわねぇ」
私は、予想しない言葉にとまどった。だけど、その後、怒りと共にこの言葉が心に浮かび上がった。
私は彼を別の女に略奪されない。お前と一緒にするな
のどまで出かかった言葉を飲み込み、私は「はい。ありがとうございます」とだけ答えて電話を切った。