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大学サークルの一気飲みで死亡した話|急性アルコール中毒

読み物

その翌朝のことだよ。午前10時頃に他の新入生が嘔吐(おうと)した物にまみれて冷たくなっていた息子を発見した。息子は嘔吐した物がのどに詰まって窒息死していたんだ。関係者から

「息子さんがお亡くなりになりました」

そんな連絡を突然もらった俺は、衝撃的過ぎて相手が何を言っているのか理解できなかったよ。

そして検死では血液検査が実施されて、血中のアルコール濃度が3〜4mg/mlで「昏睡状態」、4.5mg/ml以上になると「瞳孔が開いて呼吸機能や心機能に支障が出て死亡する」と言われているのに対して息子の血中アルコール濃度は5mg/mlにも達していた。酒の飲み方を知らなかった息子は短時間で大量のアルコールを摂取し、血中アルコール濃度は結果的に致死量相当にまで達していたんだ。

大切な息子を失い、悲しみと怒りに震えた俺は上級生5人と卒業生OBの医師2名、顧問の教授を相手に1999年12月に刑事告訴と賠償請求訴訟を起こした。急性アルコール中毒死としては全国で初めての刑事告訴(傷害致死告訴事件および保護責任者遺棄致死告訴事件)と賠償請求訴訟としてニュースでも大きく取り上げられたよ。

刑事告訴は最終的には不起訴相当とされてしまった。賠償請求訴訟の第一審は医学論争も起き、判決が出るまでに5年もかかったんだ。地方裁判所の第一審判決では、なんと

息子の死因が急性アルコール中毒とは断定できない

ということから上級生やOB、教授の賠償責任はない、すなわち被告は「無罪」という判決が出たんだ。なんとこちらの敗訴という結果だった。当然、こちらは納得できずに高等裁判所へ控訴した。控訴から3年後、ついに高等裁判所での判決は

急性アルコール中毒で、ひどい酩酊状態となった者に対して同席した関係者には安全配慮義務がある

ということで上級生やOB、教授らに1,500万円の賠償金の支払いを命じた。その後、被告側が最高裁へ上告をしたけど棄却されて判決が確定した。

医学部に入学した息子は現役の医師や医師の卵によって一気飲みを強要されて亡くなった。その加害者を『無罪』にだけはしてなるものかと思って戦ってきたんだ。加害者を有罪にすることで、少しは息子の無念も晴れたかもしれない。