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【実話】起業失敗の地獄の末路・裏社会に引きずり込まれた悲惨な脱サラ体験談


【実話】起業失敗の地獄の末路

みなさんは大人気コミックの「闇金ウシジマくん」をご存じだろうか?

その中に「中田広道」という夢を持った若者が登場する。僕はこの人物にそっくりな体験をすることになる。最初に断っておくが中田広道と違う点が3つある。

①借金はしなかったこと
②薬物は扱わなかったこと
③ハッピーエンドで終わったこと

だから、こうして今も生きている。

「起業」

多くの若者が夢見て挑戦し、ほとんどが夢破れて退場していく世界。

僕も「起業」という言葉にあこがれた若者の1人だった。結果的に僕は周りの大人に振り回されて、裏社会に引きずり込まれ、そして何もかも失った。

これからご紹介する話は全て現実に起こった出来事だ。一握りの成功者の影には僕のような「地獄に落ちた者」がいるという現実を知って欲しい。

26歳の時、僕はエンジニアとして会社に勤めていた。

「1度は起業をしてみたい」

しかし具体的なビジョンもなく、漠然とした願望を10代からずっと持っていた。

IPOで億万長者誕生
年商10億円
秒速1億

成功者=金という分かりやすい式をメディアがもてはやす時代だった。手を伸ばすと僕も成功者の仲間入りできるんじゃないだろうか?そんな、あこがれを抱いていた「夢見る夢男」だった。

その年のゴールデンウィーク。僕は衝撃的な体験をした。1人で高速道路を走行中に大渋滞に巻き込まれた。

「事故かな?」

ゴールデンウィークということもあって、ただでさえ交通量が多いのに事故なんてたまったもんじゃない。迷惑だなぁと思いながら車をちびちびと進めていった。何やら人だかりができている。警察の方が数人、渋滞の原因になったと思われる場所に集まっていた。だんだんと事故現場が見えてきた。そして僕は目を見開いた。

(人の死体だ)

親族の葬式で遺体を見たことはあるが、葬式の遺体は棺の中に収められたきれいなものだ。しかし、この時見た遺体は全く違う。何度も車にひかれたのだろう。頭と手足がもげてマネキンのように横たわる無残な遺体だった。後からニュースで知ったが高速の陸橋から飛び降り自殺があったらしい。僕は衝撃的な光景をみて、こう感じた。

「僕もいつかは死ぬんだ」

自分自身も「死」というものからは逃れられないということを悟った。無限のように感じるが人生という残された時間は有限なんだ。そして、決断をする。

今年絶対に起業に挑戦しよう

そして、ありふれているけど、重みがある言葉が僕を突き動かした。

「たった1度の人生だ」

ひとりぼっちの挑戦者

そのゴールデンウィークに僕は起業するための事業を考えることにした。いくつか出した案から将来性や僕1人で行えるものを選別した。その中から1つ良さそうな案が残った。フリーペーパーで店舗や塾の広告をするというものだ。

僕が当時住んでいた市はフリーペーパーが弱かった。リクルートのタウンワークやホットペッパーもあるにはあったが、隣にある大きな市のおまけとして後ろにちょっと紹介があるくらいだった。僕はそこにビジネスチャンスを感じた。リクルートからすると小さな売り上げしかなくて手薄になっている地域でも地域密着型のフリーペーパーを発行すれば個人が得るには十分大きな収益が見込めるかもしれない。

今までぼんやりと蜃気楼のように漠然としていた「起業」が僕の中で少しずつ具体性を帯びていくのを感じた。

今挑戦しないと一生後悔する
最悪バイトすれば生活はできる

ポジティブな言葉が浮かんでくる。

しかし、いきなり会社を退職するのはさすがに無謀すぎる。平日の昼間はサラリーマンを続け、夜と休日は起業の準備を行い、僕の事業に対する世間の反応を少しずつテストすることにした。

広告のサンプルを家庭用のインクジェットプリンターで印刷し、2つ折りにして数枚重ねてホッチキスで留めた。その中には

新しくフリーペーパーを立ち上げます。最初は無料ですので協力してもらえるお店を募集しています

と記載し、住んでいた地域の飲食店、エステや美容室、ネイルサロン、塾のポストに直接投函しまくった。100件くらい投函しただろうか。

本当にうまくいくだろうか。僕は期待しないで待っていた。1日経ち、2日経ち・・・1週間くらい経過した頃だったかな。なんと1件連絡があった。

家庭用のインクジェットプリンターで作ったサンプルで反応はゼロではなかった。まずはこのことが衝撃的だった。

連絡をくれたのはエステとネイルサロンを経営している50代の女性だった。この方をAさんとさせて頂く。Aさんは有料は難しいが無料のフリーペーパーであれば掲載に協力しても良いと言ってくれた。

そして、僕にこんな言葉をかけてくれた。

あなたみたいな若者は今まで見たことがない。でも、あなたはまだまだ粗削りすぎる。きっと40代くらいですごい成功者になりそう

何の実績もなくて、夢だけを追いかけ、不安と戦っている僕をこの言葉は震えるほど元気づけてくれた。僕は心の底から確信した。

「絶対に成功できる」

「根拠なき自信」だけしかなかった僕。でも、絶対にこの事業はうまくいくと信じて疑わなかった。

Aさんはさらにご自分の娘がバイトしているスナックを紹介してくれた。僕はそのスナックにアポを取り、当日お店に行って驚いた。

全身タトゥーのママ、紫色のライトで照らされた店内。こんなスナックがこの地域にあったのか。僕は自分の世界がいかに狭かったかを痛感した。

このスナックのママ、Bさんは30歳くらいだっただろうか。全身タトゥーの見た目とは対照的にとても優しい方だった。弱い自分を強く見せるためにタトゥーを入れているような印象の方。Bさんは初対面で僕を気に入ってくれた。そして、「私も人を紹介するよ」と言ってくれて、Cさんを紹介してくれた。

夜の案内人Cさんとの出会い

先に説明しておくと、このCさんはこの地域の「夜の世界」に広い人脈を持っており、ここから僕の人脈が爆発的に増えていくことになる。Cさんが僕の名前を売ってくれたおかげで夜の世界を中心に口コミで僕は一気に有名人になった。口コミのすさまじさを思い知った。見ず知らずの僕のような男を信じる人は少ないが、「信頼の厚いCさんが紹介してくれた僕」はCさんという担保のおかげで初対面でも大きな信頼を得ることができた。

Cさんは1人でバーを経営していた。面倒見が良くて人望があり、居酒屋の店員さんやキャバクラの女性が仕事帰りに立ち寄るため、広い人脈や情報を持っていた。

Cさんは僕をとても気に入ってくれて、「全面的に応援するよ」と言ってくれた。Cさんはいつも僕にアドバイスをくれた。

誰と誰がもめている
あそこはやばい店だ
あそこはバックに誰がいるから注意しろ

Cさんは夜の世界の案内人として僕が迷わないように道を示してくれた。Cさんに出会ったことで、居酒屋やスナックを中心に僕のフリーペーパーに掲載予定のお店がどんどん増えていった。

ある日、Cさんが僕にこう言った。

「君と同年代にすごいやつがいる。人材派遣業と服のセレクトショップを展開している社長を紹介するよ」

Cさんは僕に「X社長」を紹介してくれた。このX社長が僕の人生を大きく狂わせることになる。X社長は当時30歳くらいで、誰が見ても超が付くほどのイケメン。身長も180cmくらいあり、スタイルも良くて「イケメンのやり手社長」として有名な人物だった。

引きずり込まれた裏社会

最初に僕自身を「闇金ウシジマくん」の「中田広道」に例えたが、このX社長はウシジマくんの「G10(ゴトー)」のような人物だった。今まで表の社会しか知らなかった僕をX社長は裏社会へと引きずり込んでいく。

X社長から電話があった。

「Cさんから聞いたよ。1度話してみよう」と。

ご自分が経営する「人材派遣業」の会社の事務所に呼ばれた。夜の11時に来てくれと。入った直後は夜ということもあり薄暗いという以外は普通のオフィスのように感じた。しかし、数分後にここが普通の会社ではないことを思い知らされる。従業員の電話応対の声が漏れてきた。こんな時間に取引先からかなと思ったが、話の内容を聞いて僕は耳を疑った。

はい、今ならアンナちゃんを手配できますよ。美人でおっぱいも大きくてとても優しい子です

なんだ、ここは?「人材派遣業」って・・・デリヘルなのか?

従業員を見て、僕はこの事務所に入ってしまったことを後悔した。1人は歯が全てなかった。別の人は首とシャツの手首から和彫りの入れ墨が見えていた。他にも顔を刃物で切られたような跡のある方もいた。

ドクン、ドクンと音が聞こえそうなほど心臓の音が高鳴っている。手に汗がにじんでくる。

「やばい・・・これはやばい」

X社長を紹介してくれたCさんもこのことは知らなかったようだ。X社長は別にウソはついていない。ただ、昼ではなく夜の世界で「人材派遣業」をやっていたんだ。

そして、X社長が僕にこう言った。

怖いものを見てしまったかな?大丈夫だよ。安心していい。僕は今は裏家業の人間ではないから。僕の言う通りにすると君は絶対に成功できるよ

僕はいろいろな思いが浮かんだ。

「関係者がやばくても成功出来ればいいじゃないか」

「成功者も裏社会の方と1人や2人は関わりがあるだろう」

「ここまで応援してくれたCさん達の期待に応えたい」

そして、深呼吸をして気分を落ち着かせた。

「・・・大丈夫だ。成功したらX社長とは手を切ればいい」

そう思いながら、X社長と行動を共にする覚悟を決めた。

ある日の深夜2時くらいに電話が鳴った。X社長の従業員からだった。僕は近くの居酒屋でそこのオーナーと広告の打ち合わせをしていた。従業員はそのことを知っていたのだろう。X社長に届けてもらいたいものがあるから事務所に来て欲しいとのこと。別に苦ではなかったから事務所に向かった。

事務所に入るとデスクの上に小さな段ボールが1個置かれていた。サッカーボールくらいの大きさだ。そして、従業員の方が

とても重要な商品が入っています。これをX社長に届けてもらえますか?

僕は、「はい、分かりました」と返事をして小さな段ボールを受け取り、X社長に電話した。すると、ある公園に来てくれとのこと。

「なんで深夜の公園なんだ?」

僕は深くは考えずに車を走らせた。すぐに待ち合わせ場所の公園に到着した。深夜なので当然人の気配はない。そこでX社長は僕が来るのを待っていた。

預かった小さな段ボールをX社長に渡すと、X社長は血走った目でその段ボールを開け、あわてるようにガサガサと中身を確認した。僕はそのX社長の様子を見て動揺した。中身を確認して安心したのだろうか。X社長は冷静さを取り戻して僕にこう言った。

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