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【実話】起業失敗の地獄の末路・裏社会に引きずり込まれた悲惨な脱サラ体験談

起業失敗体験談サムネ 読み物

CさんもX社長もYさんはさすがにやばい。お前じゃどうしようもないから、とにかく逃げるしかないと2人とも意見が一致していた。だけど、僕は逃げる気は1%もなかった。

「Yさんに謝ろう」

X社長が勝手に撮影の予定を入れて、僕に連絡し忘れたことで、Yさんに大変なご迷惑をおかけすることになった。Yさんはたしかに裏社会の方だし、怖い方なのは間違いない。でも、今回は完全に被害者だ。パーティにいくらかかったか分からないし、慰謝料を高めに要求されるかもしれない。でも、今逃げたら一生逃げ続ける人生だ。

ぶん殴られてもいいじゃないか

僕はそう思って、X社長にYさんの携帯の番号を聞いて、CさんとX社長に見守られながらYさんの携帯に電話をかけた。

誰や?ほう、お前か?XXXXXX!!!!!!!

とても、ここに書けない恐ろしい内容をすさまじい迫力でおっしゃった。だが、お怒りはごもっとも。電話越しではあるが、ひたすら、ひたすら、平謝りを繰り返した。数分経っただろうか。Yさんの言葉の途切れたタイミングで僕はYさんにやっとの思いでこう伝えた。

「本当にすみません、お店に謝りに行かせてください。僕もパーティのこと聞いてなくて。Yさんにご迷惑をかけてしまって」

すると、Yさんはこう答えた。

・・・ほう、うちの店に来る気があんのか?しっかり準備して待っとくから3時に来い

そして電話が切れた。説明するまでもないが深夜3時だ。この時間帯になるとキャバクラも居酒屋も閉まってしまう。しかも、その日は平日なので本当に閑散としていて、Yさんのお店で何かあっても周囲には誰もいない。CさんとX社長にそのことを伝えると

絶対に行くな。これはやばい

と、2人の意見はやはり一致していた。僕が知らないYさんの過去を2人は知っていたのだろう。でも、僕はYさんから一生逃げ切れるとは思えなかった。

やっぱり謝りに行こう。

その気持ちは揺るがなかった。だけど、本当は怖かった。Cさんから「もしもYさんに謝りに行くのであれば、終わったら店に寄れ」と言われた。最悪のことになっていないかを確認するつもりだったようだ。深夜に激怒した裏社会の方に謝りに行くというのはさすがに怖い。怖すぎる。

深夜2時55分

Yさんのお店が入っているビルの前に僕はいた。遅刻は最悪だけど、早く行くのも迷惑だろうと思って1時間以上、ビルの近くをうろうろして時間をつぶしていた。

携帯が2:59と表示したのを確認して、Yさんのお店の扉を押した。お店に入った瞬間に圧倒された。

めちゃくちゃ怖い方が5人くらい僕をにらみつけた。

その真ん中にYさんがいた。初めてお会いした時に感じた俳優の高橋一生さんのような穏やかで優しい雰囲気はカケラもなかった。暴力団の幹部として君臨するYさんがものすごい威圧感を出して、そこに立っていた。僕はやっとの思いで

「本当にすみません」

とだけ言葉を出すことができた。ずっと頭を下げていた。

10秒くらい時間が流れただろうか。長い長い10秒。自分の心臓の音が聞こえる。手に汗がにじむ。

なぐられるだろうか
怒鳴られるだろうか

それも覚悟してきたはずだ。

・・・だけど、ひたすら怖い。

すると、Yさんが口を開いた。

「お前、よくここに来れたな」

絶対に怒鳴られると身構えていた僕は、Yさんの口調が穏やかで逆に驚いた。

「逃げようと思わなかったのか?」

顔を上げるとYさんの表情が少しだけど明らかに優しくなっていた。そして、僕は少しずつ冷静さを取り戻した。ご迷惑をおかけしたことを謝った。

とにかく、とにかく、謝った。

必死だった。ただ、うわさが加工されていることと、僕はすっぽかそうとした訳ではなかったと付け加えた。Yさんは「そうか」とつぶやいて、こうおっしゃった。

イモ引くやつは一生イモを引く。俺は1度もイモ引いたことはない。1度もだ

イモを引くというのは、イモのツルを引っ張る時に後ろに体重をかける様子がおじけづいているように見えることから、「逃げる」という意味だ。

「これからもお前はイモ引くなよ。絶対にな」

Yさんが贈ってくれた「イモ引くな」という言葉は強烈に僕の心に刻まれた。さらにYさんにパーティの費用を弁償しますとご提案したが、

「金は一切いらん」

と、1円も受け取らなかった。そして、Yさんはグラスに入った生ビールを僕に手渡してくれた。僕は震えながら生ビールを頂いた。怖い人たちにジーっと見られながら。飲み干したグラスをYさんに手渡すと同席していためちゃくちゃ怖い方々の中のお1人が

「お前良かったじゃん」

と、口にされた。めちゃくちゃ、ドスの効いた声で。

僕は深々と頭を下げてYさんのお店を出ようとした時にYさんがこの言葉をかけてくれたのを忘れない。

「・・・頑張れよ」

Yさんはすさまじい恐怖の中に「情け深さ」を感じる裏社会の方だった。Yさんを最初は裏社会の方という意味で「ハブ」で例えたけど、Yさんは筋を通すと情けをかけてくれる「丑嶋馨(うしじまかおる)」だったのかもしれない。

Yさんのお店を出て携帯を確認したら3:05だった。なんて長い5分間だったんだろう。

第6回【エピローグ】

第4回【栄光と転落】