その頃くらいから周囲の変化もあった。Cさんに人脈を紹介してもらい、繁華街で僕の名前と顔が明らかに売れていった。僕が繁華街を歩いていると
「○○ちゃん!(○○は僕の苗字)」
「○○ちゃん、頑張れ!」
とか、知らない方にも声をかけてもらえることが多かった。
ちなみにX社長はウシジマくんのG10で例えていたけど、GO10のようにX社長もこの繁華街で超有名人だった。だから、
「あの2人が組んでるんだって!」
「2人で街を変えてくれよ!」
など、言われることも少なくなかった。しかし、ウシジマくんのGO10と同じで
「X社長はうさんくせーんだよ」
「X社長はなんか信用できねーな」
という声もかなり多かった。
束の間の時間だったけど、自分が夢に向かって輝いていると実感できた頃。だが、そんな輝いた時間は長くは続かなかった。
ある日、Cさんに呼び出された。Cさんは真剣な顔で怒りも混じった口調で僕に聞いた。
「Yさんをフリーペーパーに載せるのか?」
僕はそうですと答えた。Cさんは声を荒らげて激怒した。
Yさんの店を載せるなら俺が紹介した店は全部引き上げさせるからな!
僕はCさんの怒りに驚いた。その時、初めてYさんが有名な暴力団の幹部であることを聞いた。裏社会の方でも震え上がるような「裏社会の大物」だった。僕はその事実に頭が真っ白になった。
関わってはいけない世界の人に関わってしまった。
僕は気持ちの整理ができず、うまく言葉が出ない。
ちなみに、Cさんが怒ったのは僕を心配してではなかった。Cさんが僕に人脈を紹介してくれた理由、それは僕のフリーペーパーを利用して自分が好きな人達の店だけを紹介している「思い出のアルバム」のようなものを作りたかっただけだった。だから、印象が良くないYさんを載せることに猛反対した。しかし、Cさんの言う通りにすると何もしていないのに裏社会の方というだけでYさんを傷つけることになる。Yさんとの筋を通そうとするとフリーペーパーに協力してくれる店はほとんどなくなってしまう。Cさんは僕に忠告した。
「Yさんを絶対に外せ。Yさんの店がフリーペーパーに載るとお前も困るだろう?」
基本的に僕は決断力がある方だ。スパッと決めることが多いが今回は決めることができない。裏社会の方だからといって理由もなくお断りするのも失礼だろう。Cさんとのやり取りから数日が経過したある日、こんなうわさを聞いた。
Yさんが激怒して僕を探している
僕は頭が真っ白になった。なんで、Yさんが・・・なんで、僕が暴力団の幹部の人に追われることになったんだ
すぐにCさんに電話して、Yさんが僕に激怒している理由を知らないかとたずねた。すると僕が知らないところでいろいろなことが起きていた。
X社長が、Yさんと相談してフリーペーパーで使う写真撮影の日時を決めていたが、X社長は僕にその日時を伝えることを忘れてしまっていた。Yさんは自分のお店をPRしようと盛大なパーティを開催して、モデルを何人も呼んでいた。しかし、そのことを知らない僕は当然そのパーティの撮影に来ない。Yさんはすっぽかされたと感じたんだ。
裏社会の方は「メンツ」を極めて大事にする。
さらに、Cさんが周囲に「フリーペーパーからYさんを外すべきだ」と漏らしていたらしいが、人望が厚いCさんを周囲の方は無意識のうちにかばうように、
僕がYさんを良く思っていないから外すらしい
とうわさが加工されていた。そして、パーティに僕が来なかったことが重なり、「僕がYさんを良く思っていないからパーティをすっぽかした」と広まっていた。
運命を決める2つの選択肢
「メンツをつぶされた。あのガキに」
Yさんの怒りは収まらない。「僕からするとなんで?」という状況だが、そんな言い訳が通用する相手ではない。言い方は悪いが全てをなすりつけられていた。
X社長は自分に非があることは認めたがYさんを恐れていたため「俺は関わりたくない」という態度だった。Cさんのお店でX社長と僕の3人でこれからの話になった。そして、2人からこう言われた。
逃げろ