家庭用のインクジェットプリンターで作ったサンプルで反応はゼロではなかった。まずはこのことが衝撃的だった。
連絡をくれたのはエステとネイルサロンを経営している50代の女性だった。この方をAさんとさせて頂く。Aさんは有料は難しいが無料のフリーペーパーであれば掲載に協力しても良いと言ってくれた。
そして、僕にこんな言葉をかけてくれた。
あなたみたいな若者は今まで見たことがない。でも、あなたはまだまだ粗削りすぎる。きっと40代くらいですごい成功者になりそう
何の実績もなくて、夢だけを追いかけ、不安と戦っている僕をこの言葉は震えるほど元気づけてくれた。僕は心の底から確信した。
「絶対に成功できる」
「根拠なき自信」だけしかなかった僕。でも、絶対にこの事業はうまくいくと信じて疑わなかった。
Aさんはさらにご自分の娘がバイトしているスナックを紹介してくれた。僕はそのスナックにアポを取り、当日お店に行って驚いた。
全身タトゥーのママ、紫色のライトで照らされた店内。こんなスナックがこの地域にあったのか。僕は自分の世界がいかに狭かったかを痛感した。
このスナックのママ、Bさんは30歳くらいだっただろうか。全身タトゥーの見た目とは対照的にとても優しい方だった。弱い自分を強く見せるためにタトゥーを入れているような印象の方。Bさんは初対面で僕を気に入ってくれた。そして、「私も人を紹介するよ」と言ってくれて、Cさんを紹介してくれた。
夜の案内人Cさんとの出会い
先に説明しておくと、このCさんはこの地域の「夜の世界」に広い人脈を持っており、ここから僕の人脈が爆発的に増えていくことになる。Cさんが僕の名前を売ってくれたおかげで夜の世界を中心に口コミで僕は一気に有名人になった。口コミのすさまじさを思い知った。見ず知らずの僕のような男を信じる人は少ないが、「信頼の厚いCさんが紹介してくれた僕」はCさんという担保のおかげで初対面でも大きな信頼を得ることができた。
Cさんは1人でバーを経営していた。面倒見が良くて人望があり、居酒屋の店員さんやキャバクラの女性が仕事帰りに立ち寄るため、広い人脈や情報を持っていた。
Cさんは僕をとても気に入ってくれて、「全面的に応援するよ」と言ってくれた。Cさんはいつも僕にアドバイスをくれた。
誰と誰がもめている
あそこはやばい店だ
あそこはバックに誰がいるから注意しろ
Cさんは夜の世界の案内人として僕が迷わないように道を示してくれた。Cさんに出会ったことで、居酒屋やスナックを中心に僕のフリーペーパーに掲載予定のお店がどんどん増えていった。
ある日、Cさんが僕にこう言った。
「君と同年代にすごいやつがいる。人材派遣業と服のセレクトショップを展開している社長を紹介するよ」
Cさんは僕に「X社長」を紹介してくれた。このX社長が僕の人生を大きく狂わせることになる。X社長は当時30歳くらいで、誰が見ても超が付くほどのイケメン。身長も180cmくらいあり、スタイルも良くて「イケメンのやり手社長」として有名な人物だった。
引きずり込まれた裏社会
最初に僕自身を「闇金ウシジマくん」の「中田広道」に例えたが、このX社長はウシジマくんの「G10(ゴトー)」のような人物だった。今まで表の社会しか知らなかった僕をX社長は裏社会へと引きずり込んでいく。
X社長から電話があった。
「Cさんから聞いたよ。1度話してみよう」と。
ご自分が経営する「人材派遣業」の会社の事務所に呼ばれた。夜の11時に来てくれと。入った直後は夜ということもあり薄暗いという以外は普通のオフィスのように感じた。しかし、数分後にここが普通の会社ではないことを思い知らされる。従業員の電話応対の声が漏れてきた。こんな時間に取引先からかなと思ったが、話の内容を聞いて僕は耳を疑った。
はい、今ならアンナちゃんを手配できますよ。美人でおっぱいも大きくてとても優しい子です
なんだ、ここは?「人材派遣業」って・・・デリヘルなのか?
従業員を見て、僕はこの事務所に入ってしまったことを後悔した。1人は歯が全てなかった。別の人は首とシャツの手首から和彫りの入れ墨が見えていた。他にも顔を刃物で切られたような跡のある方もいた。
ドクン、ドクンと音が聞こえそうなほど心臓の音が高鳴っている。手に汗がにじんでくる。
「やばい・・・これはやばい」
X社長を紹介してくれたCさんもこのことは知らなかったようだ。X社長は別にウソはついていない。ただ、昼ではなく夜の世界で「人材派遣業」をやっていたんだ。
そして、X社長が僕にこう言った。
怖いものを見てしまったかな?大丈夫だよ。安心していい。僕は今は裏家業の人間ではないから。僕の言う通りにすると君は絶対に成功できるよ
僕はいろいろな思いが浮かんだ。
「関係者がやばくても成功出来ればいいじゃないか」
「成功者も裏社会の方と1人や2人は関わりがあるだろう」
「ここまで応援してくれたCさん達の期待に応えたい」
そして、深呼吸をして気分を落ち着かせた。
「・・・大丈夫だ。成功したらX社長とは手を切ればいい」
そう思いながら、X社長と行動を共にする覚悟を決めた。